drink18:枯れ木
情報誌『ぴあ』の目次を見ると、内容が8つほどのカテゴリーに分かれている。「映画」「音楽」「演劇」「美術」「スポーツ」など。《若者》はこの情報誌をチェックし、《心のビタミン》を吸収するために、美術館をたずね、ライブハウスに通い、劇場の門をくぐる。また、ネットなどで新曲をあさり、生のスポーツの迫力に興奮し、スクリーンの大画面に浸る。彼らは、のどが渇くのと同じように、それらをゴクゴクと飲み干す。ひとつの食べ物に飽きたら、さらに新しいものを探し求める。
そして月日は遥かに流れ、いつしか《若者》は歳をとり、《心のビタミン》とは疎遠になり、見向きもしなくなり、枯れ、長い長い冬という名の老人となって依怙地に暮らすようになる。
なぜ、人間は老いるのだろうか? 「年齢」ではなく「心」までもが老いていく。なぜ「心」が老いるのだろうか? みんなの心が歳とともに同じ速度で老いるのであれば、それはそれで納得できる。「人は歳をとると、自然と心も老いる」という摂理ならば……。
しかし現実には、ある人は歳とは関係なく、いつまでもみずみずしい感性を保ち、心の躍動を感じさせる。反対に、ある人はまだ中年にもなっていないのに、すでに老人のような心の皺(しわ)をあらわに見せる。なぜ?
理由は、きっと星の数ほどあるはずだ。ただ、ここでは、ひとつだけ言うことにする。
「水をやらぬ木は枯れる」と。
さしでがましいことを、あなたにお尋ねする。いま、あなたのお小遣いは、いくら位だろうか?
ちなみに、一般的なサラリーマンの場合、お小遣いの平均額は月4万円位という調べがある。その内訳は、毎日の昼メシ代、コーヒー・タバコ代、雑誌代などが計2万円位、そして飲み代が2万円位らしい。あなたの場合は、どうだろうか?
さて、もうひとつ、さしでがましいことをお尋ねする。あなたは「映画」や「音楽」や「アート」や「スポーツ」や「演劇」のために、お小遣いをつかうことがあるだろうか? コンサートや美術展や映画・演劇鑑賞のために、いくら位つかっているだろうか? つまり、あなたの「心のビタミン」代は、いくらか?
「コンサートも美術展も映画も芝居も、だいたいどれでもテレビで見れるから、わざわざ金をつかう必要ないね」という人がけっこういる。テレビ、か。こりゃ、まずい。テレビでグルメ番組を見て腹がいっぱいになってしまったような「気」になったり、アドベンチャー番組を見て冒険の苦労がすべてわかったような「気」になってしまったり、ポルノビデオを見てその女優が自分のモノになったような「気」になってしまったりする……それじゃあ、まるで、自分では現場に出ることもなくデスクでふんぞり返って報告書を眺めるだけで、すべてがわかったような「気」になっておよそトンチンカンで場違いなことを言う、どこの職場にもいる管理職オヤジと同じではないか。
「テレビとは、いろいろ報告してくれる機械である」って、学生のころ学ばなかった? テレビの前にただ座って「報告」ばかり受けていると、あなたも、人生という場で、ぬきさしならない管理職オヤジになっちまうぜ。
話を戻す。あるデータによると「映画」や「音楽」や「アート」や「スポーツ」や「演劇」に一銭もつかわないという人もけっして珍しくないらしい。「酔い代」は2万円も計上しているというのに。せめて、その4分の1の5千円位でもつかって、自分の心に生のビタミン補給をしてあげればいいのに……。
コンサートや美術展や映画・演劇鑑賞で……。
でも、そんなお金があったら、飲んじゃうわけだ。
そして、いずれ、あなたの中で、「水をやらぬ木は枯れる」のだ。
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